名作振り返り「カスタムロボ1、V2」
今回は64時代の「カスタムロボ」について振り返ろう。
今月には、実質カスタムロボの続編のSYNAPTIC DRIVE(シナプティック・ドライブ)の発売が控えているからね。
「カスタムロボ」とは?
「カスタムロボ」を知らない人に説明しよう。
ロボットを自分好みにカスタムして戦う対戦アクションで、RPGとしての楽しみもある。
今回は、1999年に発売した初代カスタムロボと、2000年に発売したカスタムロボV2を振り返ろう。
共にニンテンドー64で出たタイトルだ。この2つはワンセットとして考えてよい。
ニンテンドー64という時代背景
ニンテンドー64時代は、任天堂受難の時代と思われているかもしれない。
確かに、サードパーティ(他社ソフト)から見放されていたという意味では、最悪の時代だった。任天堂はCAPCOMにもスクウェアにもエニックスにも、まるで見放されたのだから。
だが、それを除いた任天堂ソフトに目を向ければ、良い時代だった。
64時代は、任天堂が3Dゲームに本格参戦した最初の世代で、現代まで続くタイトルの基礎ができた時代であった。
64の任天堂はいわば「鎖国した江戸時代の日本」だった。
あの頃の任天堂はゴーイングマイウェイ、独自の文化を生み出していたのだ。というか、そうしなければ生き残れなかった。
任天堂は必死に、お抱えの子会社達にも質の高いゲームを作るように要請した。
「カスタムロボ」を手がけた株式会社ノイズもその中の1つ。
カスタムロボという冴えないネーミング
「カスタムロボ」という名前には、なんとも冴えない地味な響きがしないだろうか。
あまりにも直球で、クレヨンしんちゃんの劇中劇の 「カンタムロボ」みたいな絶妙なダサさもある。一文字違いだし。

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昭和的で、古くさく、カッコよくはないネーミングだった。それ故に現代では淘汰されてしまったのだと思う。
「スプラトゥーン」みたいなこじゃれたネーミングで、かつデザインもオシャレだったら、もう少し違う未来があったかもしれない。
が、なにかこう引き付けるものがあった。
名前は昭和的でも古くさくとも、やはりロボや武器というのは少年の心を夢中にするものなのだ。
私としては個性豊かなパッケージと、ロボを自分好みにいじれるという触れ込みが魅力的で、つかみはオッケーだった。
ホビーアニメのような世界観と魅力的なキャラ達のRPG
カスタムロボが単なるアクションシューティングだったら、そこまで記憶に残らなかった。
RPGとしての面白さがあったから、ゲームの核であるロボットバトルも楽しいものとなった。
キャラも印象的だった。
個性的で惹かれる奴ばかり。絶対的王者のマモル、2でまさかのイメチェンを果たすユリエ、いつも2番のツカサ、おてんば娘のカリン、三枚目で小悪党のフカシとか。
私は特にユリエの変貌ぶりが好きだったね。
ストーリーは、まさに王道男児向けアニメのようだった。
メダロット無印にも引けを取らない。この作品がアニメ化されていなかったのが不思議なくらいだ。
私などは、2000年くらいにテレビ東京でアニメがやっていたような気がしてならないよ。
カスタムロボをはじめた少年が、数々のライバルや悪の組織との戦いを経て、チャンピオンを目指すという、それはもう王道中の王道だった。
そして、ロボットバトルが楽しいから、RPGも楽しくなった。
そこには素晴らしいシナジー(相乗効果)があった。
シンプルを追求したロボットバトル
ゲームの核となるのはロボットバトル。
とにかく任天堂らしい、シンプルなのが良かった。
ロボットのカスタムも、操作もね。
コマンド入力もガチャ要素もなく、むしろ自由だった。
カスタマイズ
まずバトルをはじめる前に、使うロボを選ぶ。バランス型か、スピード型か、防御型、空中機動型などいろんなタイプから選ぶ。
そこからガン・ボム・ポッド・レッグの4種類のパーツを選べば完了。つまり5か所を選んで組み合わせるだけなので、直感的に選ぶことができる。
様々なパーツを覚えるのは大変そうに思えるが、RPGのストーリーを通じて覚えられるので、さほど負担にはならない。その点はポケモンシリーズと似ている。
また1度入手した武器を消費するという概念はないし、レア武器が中々手に入らないなどといった、最近のソシャゲみたいなゲームではなかった。
ほぼすべての武器やロボの入手条件は、ストーリーをクリアすることだけ。
属性とか、そういう面倒な概念がないのも良かった。
バトル
Aボタンがガン、Bボタンがボム、Zボタンがポッドという風に割り振られていて、非常にシンプルだった。
いかに爆風や銃で攻撃するかの勝負で、複雑なコマンドは一切なかった。
最近だと、「ARMS」がこれに近い。
一応難易度の高いコンボもあるが、遠距離武器中心で戦うなら、覚えなくても戦える。私は当時から若者とは思えない手堅いスタイルを好んでいたので、対戦相手の友人にはあまりよく思われなかったようだ。
この辺はシナプティック・ドライブでも、おそらく共通すると思われる。
その後のカスタムロボ
カスタムロボシリーズは、残念ながら2006年にDSで出た「激闘!カスタムロボ」を最後に、シリーズが途絶えることになった。
私はこのタイトルを遊んでいないから偉そうなことは言えないが、GBA版やGC版で、異なる方向性を模索していたのが仇になったと思う。
GBA版の「GX」では、バトルの部分が64時代と変わった。2Dになり、簡素化したのはいいが、ほとんど別ゲーになってしまったのだ。
GC版の「バトルレボリューション」では、RPGパートや世界観が変わった。
少し高年齢向けになり、大人っぽくなったのだ。これがコテコテの子供向けアニメの世界観だった初代が好きな人には、受け入れ辛かった。
私が思うに、カスタムロボは64で完成され過ぎていた。
V2の時点で、もう手を加えなくて良い程にゲームシステムが出来上がっていたのだ。
特にGC版の失望は大きかった。すでに出来上がっていたブランドイメージを、大きく変えようとし過ぎた。おそらく、海外展開を意識し過ぎた。
スマブラのように、グラフィックが進化して、キャラや武器を増やすだけで十分だったのだ。
実質カスタムロボ「シナプティック・ドライブ」とは
さて、カスタムロボの遺伝子を継いだゲームが2020年にようやく発売する。
それが冒頭にも挙げたSYNAPTIC DRIVE(シナプティック・ドライブ)だ。
カスタムロボを手がけた見城こうじ氏が、手がける最新作で、ゲームシステムもかなりカスタムロボと共通しているようだ。
カスタマイズとバトルの要素は、ほとんどカスタムロボと一緒だと言っても過言ではない。
ファイター・ガン・ワイヤー・トラッカーと名前を変えてるが、ロボ・ガン・ボム・ポッドとだいたい一緒だ。
だから、実質カスタムロボと呼んでもいい。
ただ、また海外受けを狙ってキャラをリアルにしたり、RPGパートが無いといった点は、カスタムロボとはまるで異なる。
”あの頃の”カスタムロボは決して帰ってくることはない。
だがシナプティック・ドライブは、よりe-sports的になり、カスタムロボの代替品以上のものを期待したい。
まずは、おそらく"あの頃"を生きた友人達であろう読者の皆さん達に、「こんなゲームが出るよ」とお伝えしたかった。